介護が政治に望むこと(6)「介護福祉士からキャリアアップできる専門資格を創出し、人材確保を」―介護福祉士会・石橋真二会長(医療介護CBニュース)

 不況の中でも、年間の離職率が2-3割で推移し続けるなど、人材難が続く介護業界。その原因を「介護の現場にはキャリアアップの仕組みがないため」と分析するのは、日本介護福祉士会の石橋真二会長だ。この問題に対し、政治ができることは何か―。石橋会長に話を聞いた。

―まずは民主党を中心とする連立政権に対する印象をお聞かせください。
 前の自公政権に比べれば、介護に対して理解があるのではないでしょうか。少なくとも長妻昭厚生労働相や、山井和則厚労政務官の言葉を聞いていると、真摯に取り組もうとしている姿勢は見て取れます。この点、社会保障費を削減し続けた自公政権とは大きく違います。100点満点で言えば、今後への期待も込めて60点といったところでしょうか。

―かなり減点されていますね。マイナス要因は何でしょうか。
 まだ何も成果が出ていませんから、高く評価するわけにはいきません。さらに言うなら、果たして民主党は昨夏の衆院選の公約を実現できるのかどうか、という疑問もあります。特に、公約にあった「介護職員の処遇改善交付金の4万円値上げ」については、実現の道筋すら明らかになっていません。
 その理由は、いまだに財源が確保できないためでしょう。当初は霞が関から特別会計の剰余金や積立金を吐き出させ、財源に充てるなどとしていましたが、実際にやってみると、思ったほど「埋蔵金」を“発掘”できていません。最近は、与党から「埋蔵金」という言葉も聞かれなくなりました。消費税の論議も、参院選を前に封じ込められつつあります。

―民主党が掲げた政治主導という姿勢は、介護分野で実現できているでしょうか。
 この点も少し首をひねらざるを得ないですね。例えば今年3月29日、「今後の介護人材の養成の在り方に関する検討会」が開催されました。介護福祉士の資格取得要件に加わる「600時間養成課程」や長期的なキャリアアップの仕組みなどについて、議論していこうという検討会ですが、主な課題の一つである「3年以上の実務経験者に対し600時間の養成課程を課す」という条件については、既に何度も議論を重ね、2012年度からの義務化が決定しています。連立政権が誰の意見を取り上げて、この検討会を企画したのかは分かりませんが、既に決着が付いたものを蒸し返し、緩和する方向で検討会を開催するのは、何か納得できない。この件に関しては、悪い方向にぶれたとしか思えません。
 当たり前のことですが、どんな職種でも、それなりの基本的な技術や体系的な知識の習得が必要です。そして基本的なことができていなければ、専門性を高め、キャリアアップを目指すこともできません。そういう意味でも、600時間の養成課程は不可欠と言えるでしょう。

―夏には参院選があります。各党に公約として盛り込んでほしい内容を教えてください。
 まずは、これからの日本の社会において介護をどのように位置付けていくのかという長期的なビジョンを明示してほしい。当然、そのビジョンは12年の診療・介護同時報酬改定を念頭に置いたものであるべきです。
 特に介護報酬に関しては、人材が定着するような改定を公約してほしい。

―介護報酬をどのように改定すればよいとお考えですか。
 介護の現場では、国家資格の介護福祉士から資格が必要ない職種まで、さまざまな立場の方が働いていますが、報酬面ではそれほど差がありません。
例えば介護福祉士になったら、給与はこのくらいアップする。あるいは、介護福祉士がさらに専門的な分野の技術を習得すれば、専門介護福祉士として認定し、さらに高い給与を保証する、といったキャリアアップを支援する仕組みを介護報酬に盛り込むことを約束してほしいのです。

―具体的にどのような専門資格が考えられるでしょうか。
 第一に考えられるのは、認知症専門の介護福祉士でしょう。また、理学療法士とは別に、リハビリについての専門知識を持った介護福祉士の資格も必要かと思われます。実際、病院から自宅に戻った後、機能低下してしまうという要介護者の話はよく聞きます。その点、在宅介護の場でリハビリを支援できる介護福祉士がいれば有効です。
 介護と看護の連携も重要とされています。本来であれば、痰の吸引や胃ろうの経管栄養にしても、看護師にやっていただくのが理想です。ただ、現実的には難しい。この4月、厚生労働省は、痰の吸引や胃ろうの経管栄養に関しては、一定の条件さえ満たせば、介護職員が行っても違法ではないとする通知を出しました。これは特別養護老人ホームに限定した通知でしたが、現実には、他の施設や在宅でも、ヘルパーや介護福祉士が、そうした行為をやらざるを得ない状況にあります。ならば現実に合わせて、ある程度の医療行為を担うことができる介護福祉士の資格を創設してもよいのではないでしょうか。
 いずれにせよ、現場の現実に即した公約を考案してほしい。声の大きな有権者団体だけを見るのではなく、弱い立場の、声を上げられない小さな団体にも目を向けてほしいのです。それこそが、政治の役割ではないでしょうか。

―介護報酬以外での提案はありますか。
 介護分野に若い人材が興味を持ってもらうためにも、教育と介護の連携を強化するような公約を考えてほしいですね。例えば、「小中学生が授業の一環として地域の高齢者や施設に入居しているお年寄りと接する機会を設ける」といった施策があってもよいと思います。
 もう一つ、どうしても強調しておきたいことがあります。公約で掲げる以上、実現してほしいということです。万一、約束期間までにできないならできないで、その理由を明確にすると同時に、いつまでに実現するのか、その財源と共に明示すべきです。特に民主党は、先の衆院選のマニフェストで介護職員の処遇改善交付金として4万円を出すと公約しました。新たな公約を考える前に、今ある公約を確実に実行することを改めて約束してほしいですね。


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